ホームパイ
それは、今でもビビッドに思い出される光景の主役にいる。
幼稚園のお友達のお家に遊びに行った。
友達と言っても、母同士が仲が良く、近所にその幼稚園に通うのはその子だけだった。
お家に上がったのは、先にも後にもそれ一回の記憶しかない。
お屋敷だ。子供心にこの子とは育つ環境が違うなと思っていた。
でも、なんだかこのお家暗いなとも思ってた。
お友達のお母さんが出してくれたオヤツが、不二家のホームパイだった。
私はこれに衝撃を覚えた。こんな美味しい、おしゃれな食べ物があるなんて。
また、ホームパイに海外を夢見た。初めて感じた外国の味だったかもしれない。
その頃は不二家の店舗に行かなければホームパイは買えなかった。
2枚のパイが丁寧にシャカシャカと音がするセロファンで
キャンディー包みでひねりくるまれていて、とても高級に感じていた。
母がバターが嫌いだったので、バターの味をこのホームパイで覚えたのかもしれない。
私のパイ好きはここから始まったのかもしれない。
今でも思い出せる。あのときの出会いを。
でも、ディスカウントストアーで叩き売られ、薄くなったパイを見るとちょっと悲しい。